毎年、春になると必ず何組かの母娘たちが、進学した学校の指定の靴が足に合わない、履くと足が痛い、という相談のために「靴外来」にやってきます。
特に私立の中学や高校に多いのですが、指定靴はたいていスリップオン型の黒か茶のローファーが採用されています。
女子学生らしい靴という憧れもあって、最初は期待に胸を膨らませて履いていますが、次第にトラブルが現れてきます。単に足の痛みや靴擦れを起こすだけでなく、「外反母趾」や「ハンマートゥ」など足の変形が生じたり、「巻き爪」や「陥入爪」になったりすることも多く、いったん変形すると治すのは容易ではありません。一生残ることもあるのです。
生活指導の先生からは「当たって痛いなら、大きめを買えば?」と言われることもあり、治療に必要であっても、他の靴を履くことは一切許さないという学校すらあります。しかし、半ば強制的に履かせる指定靴で、成長期の足に変形をもたらし、障害化させていいのでしょうか?
不適切な靴によって起こりうる成長期の下肢トラブルについて、整形外科医をはじめとする医療資格者だけでなく、学校での指導者や保護者にもその実態を知っていただけるよう、予防や治療のために必要なことについてお話します。
朝日新聞「私の視点」より抜粋