明日1月11日に「靴を考える会 (第29回 勉強会)」にて講演させていただきます。
「靴を考える会」は、1987年に開始され、靴の製造や販売に係る方々が集まり、現場の問題の改善や知識と技術の向上のために、大阪で奇数月に勉強会を開催されている足と靴の学びの会の中では老舗の会です。今まで、各分野の先生方や熟達者の先人の方々が講師として講演されています。
そこに、このたび、日独小児靴学研究会の共同代表および常任講師としてお招きいただき、お話する機会をいただきました。光栄すぎて、身震いします。
奇しくも、1月11日は、日独小児靴学研究会設立から丁度一年という記念すべき日です。そのようなご縁にも感謝いたします。
「靴を考える会 (第29回 勉強会)」
◉日 時:2017年1月11日(水) 19:00〜20:30
◉会 場 : 「エイドセンター大阪 」5階会議室
(大阪市北区同心2-5-22 川村同心ビル)
JR環状線 天満駅、JR東西線 大阪天満宮駅、地下鉄堺筋線 扇町駅 ……いずれも徒歩10分以内◉テーマ:「日独小児靴研究会」発足とその背景について
◉講 師:伊藤笑子
マスターシューアドバイザー・保健学修士
日独小児靴研究会共同代表
ウェルネス&シューズサロンフラウプラッツ代表◉内 容:〝子どもの足は大切で、靴は重要である〟とは徐々に知られつつも、今まで、体系的な専門者教育がなく、民間で各々にセミナーが開催されており、消費者がその情報に翻弄されている現実がいま、業界では緊急の課題としてあります。 そこで、足と靴の正しい見地を「小児靴学」と位置づけ「日独小児靴学研修」をスタートし、職種や経験値を超えて集まり、学んでいます。子どもの足と靴の、製造・企画・販売・医療・教育・相談に関わるすべての人たちのために《子どもの足と成長から、足と靴を役割を知る》を繋いでいきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします!
近年「歩育」や「足育」の啓発活動が盛んになり、シューフィッターの資格にも〝幼児子ども靴専門シューフィッター〟が加えられて久しいです。
子どもの足、靴について関心が高まってきている、子供靴に対する需要も再熱している、と言われていますが、一方で、日本靴医学会や日本整形靴技術協会、その他の学会でも「小児の足と靴」関連の学術発表は、このところ減少傾向です。(元々、多くない上に更に減少しています)
これは一体どういうことでしょう?
子どもの足と靴を語る講演や講座の開催、子どもの足や姿勢、歩き方の相談や靴のアドバイスをする生業の方々も増えています。
しかし、個々に語られる「子どもの足と靴」の情報について、学術的、科学的に調査・考察・検証されていない通説や一般論、メーカーサイドの情報だけで、本当にいいのでしょうか ?
〝幼児子ども靴専門シューフィッター〟の資格をお持ちの方でさえも、2日間11時間の講習しかなく(受講資格には、3日間のプライマリー受講完了者であることが条件ですが)様々な相談を持ちかけられた時、〝専門家〟として応えられるか ? というと不安があります、という声を聞きます。
なぜなら、日本には「小児の足」について体系的に学ぶ研修機関というものが存在せず、医療資格者でも「足部」について詳細に学ぶことは、学生の間にはほとんどなく(整形外科医でも足部に特化した知識をお持ちの先生はとても少ないです)、靴については当然、講義もありません。
靴の見極めやフィッティング技術についても、靴メーカーや販売店に属し、携わっていても、ひとつのメーカー、ひとつの職場で扱う靴の偏りから、個々の技能の差も生じます。
そういう現実の中で、客観的で、的確で、正しいアドバイスを提供できる人がどれほどいるのか ? と見渡せば、残念ながら懐疑的です。
もちろん、ご自分の知識を活かし、発信することは自由です。
学会発表や論文化することがすべて正しい訳でもありません。
しかし、足や靴の〝専門家〟として消費者にオフィシャルに語る以上、自ら調査・考察・検証してみて、その整合性や客観性を伴う〝きちんと自分で裏を取った情報=根拠のある知識〟を消費者に提供することが責務だと考えます。
私は、現場経験だけは豊富ですが、自分のフィールド(販売店)以外で、多人数に講演する場合、その話の内容に責任が持てるか ? と考えた時、初学者としてエビデンスを伴った見解を示すということを一から学び直し、学会や論文発表の中で、厳しい洗礼を受けてきました。そして、そこで改めて検証できたことや、根拠をきちんと精査した上での内容のみを「足育講座」という形で発表しています。
その過程を経ない情報は、単なる〝自己見解の意見〟ではないでしょうか ?
情報過多の現代、こと「子どもの足と靴」については、相談者さんが「行く先々で違うことを言われる」「メーカーやサイトをごとに違うことが書かれている」と、どの情報、誰の意見を信用すればいいのか ? と翻弄されています。
子どもの健康を願い、足の成長発達という〝情報〟と子供靴という〝商品〟を求めている消費者の方々にとって、その情報を信頼に値する知識としてきちんと受け取っていただきたい、と切に願っています。
また、間違った判断で状態を悪くすることはもちろん避けるべきことであり、きちんと医療に橋渡ししながら、靴の対応も適切に考えて行う、という他職種連携を取っていくためには、靴の販売現場はもちろん、すでに専門者として携わっている医療者の方々や保育・教育の現場の方々にも「小児の足と靴」について今一度学んでいただきたいと思います。
そんな願いから、正しい知識を得る場所、研鑽を積む場所、子供靴の知識のスタンダードを示す役割を担うため「日独小児靴学研究会」を立ち上げました。
一期生のみなさんは、職域もキャリアも超えて全国から集まり、一線で活躍し続けている講師から、専門者に必要な技能をダイレクトに受け取っています。研修は座学だけではなく、多くの子どもたちと保護者の方のご協力のもと、毎回実技も行っています。
プライマリー(基礎講座)だけで、52時間を超える研修時間を費やし、各々に研究テーマを掲げて、最終発表に向けて、日々取り組んでいます。
子どもの健康、発達、運動と足と靴に関わる方々の知識を横断的に繋いで、日本の子供靴の文化として、しっかり根付き、お役に立てますように。
そんなお話を明日、心をこめて一生懸命させていただきます。
どうぞよろしくお願いします。
日独小児靴学研究会
共同代表 伊藤笑子